令和4年度 水稲作柄現地調査報告

令和4年度 水稲作柄現地調査報告

9月1日から2日にかけ、北海道農政部技術普及課・各地農業改良普及センター、道総研農業試験場、各地区米麦改良協会、関係機関の皆様のご協力を得て、水稲作柄現地調査を2班(道南班、道央・道北班)で実施しました。

本年度の調査につきましても、新型コロナウイルス感染対策を受け昨年に引き続き参加人数や調査箇所等を縮小した形で実施しております。

調査概要につきましては、北海道農政部技術普及課 李家上席普及指導員様、小泉主任普及指導員様、内田主任普及指導員様に作成していただきましたので、ここにその内容を掲載いたします。

ご同行及び報告をまとめていただきました李家様、小泉様、内田様、上田主査様、またお忙しい中、現地で対応いただいた各農業改良普及センター・道総研農業試験場ほか関係の皆様に厚くお礼申し上げます。

令和4年9月12日
一般社団法人 北海道農産協会

令和4年度 水稲作柄現地調査の概要

道南班作柄報告

渡島地区(北斗市、道南農試)

  • は種作業は平年並。高密度播種栽培が増えているため、作業分散が図られ、播種終は1日遅くなった。育苗期間並びに育苗・移植作業ともに好天で経過したため、トラブルもなく順調に推移した。
  • 活着は良好だったが、6月2半旬からの低温・日照不足と強風の影響により初期生育は停滞した。
  • 6月4半旬からの高温で生育には回復が見られ、幼穂形成期は平年並から2日程度早まった。その後は出穂期も平年並で、穂揃いや開花は概ね良好となった。
  • しかし、6月と7月中旬の日照不足、強風、降雨等により、茎数確保は平年の94%にとどまり、稔実籾数は平年並~やや少なくなると見込まれる。
  • いもち病は薬剤防除により抑制していたが、8月中旬の防除作業終了以降、穂いもちの発生が散見される。
道南農業試験場(北斗市) 優決ほ場

道南農業試験場(北斗市) 優決ほ場

北斗市 優決ほ場

北斗市 優決ほ場

【檜山南部地区(厚沢部町)】

  • は種及び移植作業は平年並に行われ、育苗期間中も順調に経過した。
  • 移植後の活着も良好だったが、6月2半旬からの低温・日照不足と強風の影響により初期生育は停滞、その後6月4半旬からの高温により生育は回復し、幼穂形成期は2日程度早まった。
  • 出穂期も平年並からやや早く、穂揃いや開花は概ね良好となった。ただし、穂ばらみ期に遭遇した強風と降雨の影響により、海岸部では褐変穂の発生が見られる。
  • 稔実籾数は平年並からやや少なめで、収穫は9月20日過ぎからと平年よりやや早まる見通し。
  • 当地区では密播中苗栽培が増加しており、本年の取り組み面積は311haと、檜山南部水田面積の30%以上となっている。
厚沢部町 優決ほ場

厚沢部町 優決ほ場

【檜山北部地区(今金町)】

  • は種作業は平年並。好天で経過したため、育苗管理、移植作業ともに順調に推移し、移植終は平年より2日早まった。
  • 活着は平年より2日早まったが、6月2半旬から気温が低下し、特に最低気温が平年対比3~6℃低い日もあり、苗の退色が全般的に見られた。
  • 6月4半旬からは生育に回復が見られ、遅れていた分げつも徐々に確保できた。また、幼穂形成期や出穂期は平年並で、穂揃いや開花も良好であった。
  • 7月は高温多湿条件が続いたため、8月8日にいもち病の初発が確認されたが、速やかな薬剤防除により蔓延を防いだ。また、葉鞘褐変病が散見されており、8月1日の降雨を境に、褐変穂の発生も目立つ傾向にある。
  • 稔実籾数は平年を下回る見込みで、収穫は9月中旬頃から始まる見通し。
  • なお、6月下旬並びに8月中旬の大雨により、一部ほ場では冠水被害を受けた。
今金町 優決ほ場

今金町 優決ほ場

【後志地区(蘭越町)】

  • 6月上旬から中旬の低温により初期生育は緩慢で、茎数は平年より少なかった。
  • 幼穂形成期は平年より1日遅く、その後天候の回復により出穂期は平年比2日早まり、成熟期は平年より2日早まる予想。
  • 穂数は平年より少なめで地域差が見られる。総籾数は平年を下回るが、登熟は平年並に推移している。生育の早いほ場で、9月7日頃から収穫作業が始まる見込みである。
  • 今のところ倒伏の発生はないが、褐変穂が一部で発生している。
蘭越町 優決ほ場

蘭越町 優決ほ場

【胆振地区(厚真町)】

  • 育苗期間中は好天に恵まれ苗の生育は順調だったが、成苗「ななつぼし」で一部、早期異常出穂が見られた。
  • 6月上旬から中旬の低温により初期茎数は少なく、特に移植が遅れたほ場では活着時から生育差が生じた。
  • 幼穂形成期は平年より1日遅く、出穂期は平年より2日遅くなったが、8月以降、気温が高く推移しているため、成熟期は平年より1~2日早くなる見込みである。
  • 穂数は平年比91%だが、ほ場間差がみられる。ただし、一穂籾数が平年より多くなり(ななつぼし)、総籾数も平年より多いため、地域差があるものの平年作は期待できる。
  • 葉鞘褐変病の発生が見られ、一部で倒伏が発生している。
  • 収穫適期判定会からは、9月12日頃から収穫が始まる予定になっている。
厚真町 優決ほ場

厚真町 優決ほ場

優決ほ「ななつぼし」

優決ほ「ななつぼし」

【空知南西部地区(長沼町)】

  • 5月下旬の好天により活着は良好だったが、6月に入り強風と低温により葉色が淡く生育が緩慢となり、初期生育は不良であった。当地域は、疎植栽培の面積が多いため、初期生育の影響が大きくほ場間の差も見られる。
  • 6月中旬以降気温が高く推移し、茎数(7月1日現在)は平年並まで回復した。
  • 幼穂形成期、出穂期ともに平年より2日遅くなったが、成熟期は平年より1日早まる見込みである。
  • 穂数は平年並も一穂籾数が平年より多いため、総籾数も多くなった。ほ場により不稔の発生が平年よりやや多くみられ、稔実籾数は平年並である。
  • 葉鞘褐変病、褐変穂の発生が見られた。
長沼町 優決ほ場

長沼町 優決ほ場

疎植栽培の生育状況(長沼町)

疎植栽培の生育状況(長沼町)

【空知中央地区(美唄市)】

  • 移植後、活着は良好で初期生育も良かった。6月中旬以降、日照不足となり葉色が淡い状態が続き、7月15日現在の茎数は平年比87%であった。その後生育は回復したが、穂数は平年比95%にとどまった。
  • 幼穂形成期並びに出穂期は平年より1~2日遅くなったが、8月以降、気温が高く推移しているため、成熟期は平年比2日程度早くなる見込みである。
  • 穂数は少ないが、一穂籾数が平年より多いため、総籾数は平年並となった。不稔歩合も平年並であり、収量は平年作を見込んでいる。
  • 葉鞘褐変病、褐変穂が一部で発生している。
美唄市 優決ほ場

美唄市 優決ほ場

優決ほ「ゆめぴりか」

優決ほ「ゆめぴりか」

【石狩地区(当別町)】

  • 6月上旬から中旬の悪天候で初期生育は不良となり、その後の茎数の増加も緩慢で、穂数は平年比93%だった。
  • 幼穂形成期は平年より1日遅く、出穂期は±0日だった。8月以降は気温が高めに推移しているため、成熟期は平年より1日程度早くなる見込みである。
  • 穂数は少ないものの、一穂籾数が平年よりやや多いため、総籾数は平年並を確保した。不稔歩合も平年並となり、収量は平年並を見込んでいる。
  • 収穫作業は平年並に始まる見通し。
  • 葉鞘褐変病、褐変穂が例年より多く発生している。
当別町 優決ほ場

当別町 優決ほ場

道央・道北班作柄報告

【空知中部地区(新十津川町)】

  • は種作業は平年並で、育苗管理・移植作業ともに順調に進んだ。育苗期間後半の高温多照により葉齢が進んだため、一部で老化苗が見られた。移植終は5月26日。
  • 移植中は強風により植傷みが見られたが、活着期は平年並となった。6月2半旬以降の低温により苗の退色が見られ、風の止まない状態が続いたため、葉色の回復に時間を要した。地区内や移植時期でのほ場間の差が大きな年となった。
  • 6月4半旬には生育の回復が見られ、茎数も徐々に増加した。また、幼穂形成期もほぼ平年並となった。
  • 穂数は平年並、一穂籾数が多く、不稔歩合は平年並であったことから、稔実籾数では平年並からやや多く確保できる見込みである。
  • 収穫作業は平年並に始まる見通し。
新十津川町 優決ほ場

新十津川町 優決ほ場

優決ほ「ゆめぴりか」

優決ほ「ゆめぴりか」

【空知北部地区(深川市)】

  • 出芽期以降に低温時もあったが、育苗管理・移植作業ともに順調に進み、移植終は5月26日で平年比3日早かった。
  • 6月2半旬からの低温により、全般的に苗の退色が見られ、回復には時間を要した。また、ほ場間差が大きかった。
  • 6月4半旬以降は生育は回復し、茎数の確保も進んだ。幼穂形成期は平年並。
  • 穂数は平年並からやや少ないものの、一穂籾数がやや多くなり、不稔歩合は平年並であったことから、稔実籾数では平年並からやや多く確保できる見込み。
  • 収穫作業は平年並からやや早く始まる見通しである。
深川市農業センター 試験ほ場

深川市農業センター 試験ほ場

深川市農業センター 試験ほ場

深川市農業センター 試験ほ場

【留萌地区(留萌市)】

  • 降雪量が多く融雪が遅れたため、は種作業は平年より3日遅くなった。その後は好天により、苗の生育、移植作業ともに順調に進んだ。
  • 植傷みも生じたが、活着は平年並からやや良好であった。6月1半旬からの低温で、苗の退色が全般的に見られ、回復に時間を要した。地区内や移植時期でのほ場間の差が大きかった。
  • 6月4半旬以降は生育が回復し、茎数も徐々に確保された。幼穂形成期は早2日、出穂期は平年並となつた。
  • 穂数は平年並からやや少ないものの、一穂籾数がやや多く、不稔歩合は平年並であることから、稔実籾数では平年並からやや多く確保できる見込み。
  • 収穫作業は平年並に始まる見通し。
留萌市 優決ほ場

留萌市 優決ほ場

【上川北部地区(名寄市、士別市)】

  • は種作業は平年並で、育苗管理・移植作業ともに順調に進んだ。移植終は名寄で5月28日(早2日)、士別で5月29日(±0日)と平年並であった。
  • 植傷みが見られ、活着は平年並からやや不良であった。6月1半旬からの低温では苗の退色が全般的に見られ、回復に時間を要した。地区内や移植時期でのほ場間の差が大きかった。
  • 6月4半旬以降は生育が回復し、茎数も徐々に確保された。幼穂形成期は名寄で6月29日(早2日)、士別で6月29日(早1日)と平年並となった。
  • 穂数は平年並からやや少なく、一穂籾数がやや多い。また不稔歩合は平年並となったことから、稔実籾数では平年並からやや多く確保できる見込み。
  • 収穫作業は平年並からやや早く始まる見通し。
名寄市 作況はくちょうもち

名寄市 作況はくちょうもち

士別市 優決ほ場

士別市 優決ほ場

【上川中央地区(旭川市、東川町)】

  • は種作業は平年並で、育苗管理・移植作業ともに順調に進んだ。移植終は旭川で5月28日(±0日)、東川で5月26日(遅1日)と平年並であった。
  • 移植時期は風が強かったものの、日照があり水温が確保されたことで、活着は良好であった。6月1半旬から2半旬の低温時では、日照時間が確保されており、初期生育は良好となった。ただし、地帯や移植時期の違いによるほ場間の差は見られる。
  • 6月4半旬からは高温で生育は順調に進み、茎数は平年より多くなった。幼穂形成期は旭川で6月29日(早3日)、東川で6月26日(±0日)と平年並からやや早まった。
  • 一穂籾数は平年並からやや少なく、不稔歩合も平年並ではあるが、穂数が平年より多いため、稔実籾数はやや多めに確保できる見込み。
  • 収穫作業は平年並からやや早く始まると予想されている。
旭川市永山 優決ほ場

旭川市永山 優決ほ場

東川町 優決ほ場

東川町 優決ほ場

【上川南部地区(中富良野町)】

  • は種作業は平年並で、5月は好天で推移し、育苗管理・移植作業ともに順調に進んだ。移植終は5月21日で平年並であった。
  • 活着は良好であったものの、5月6半旬から6月1半旬の低温寡照、強風による深水管理などで分げつ抑制も見られた。本年は地区内、移植時期の違いによるほ場間の差が大きかった。
  • 6月3半旬からは高温傾向となり生育が回復し、茎数も徐々に確保された。幼穂形成期は6月30日と平年並であった。
  • 一穂籾数は多いが、穂数は平年より少なく、不稔歩合が平年並となったことで稔実籾数では平年並から少ないと思われる。
  • 収穫作業は平年並に始まる見込みである。
中富良野町 優決ほ場

中富良野町 優決ほ場

総合検討会における協議事項について

  1. 両班による調査終了後、道農政部(道南農試駐在)李家上席普及指導員を座長とする総合検討会を開催し、本調査のまとめと課題整理を行いました。
  2. 本年の気象と生育経過のポイント
    1. (1)本年の4月から5月の気象は、比較的好天で経過したため、耕起作業は3日早く進み、苗の生育も順調で、移植時苗素質も平年並を確保しました。
      また、移植時期前半は好天に恵まれ、移植始は5月17日と平年より1日早まりました。
    2. (2)しかし、6月に入ってからは低温寡照となり、強風も加わったことから、遅植えほ場を中心に植傷みや苗の退色が発生しました。この傾向は道南や太平洋、オホーツク海側で顕著であり、その後の茎数確保に悪影響を及ぼしました。6月中~下旬になると天候は回復し、遅植えのほ場でも生育に回復が見られ、全道的に分げつ発生が盛んとなりました。
    3. (3)7月中~下旬は再び日照不足で降雨の日も多くなりました。このため、生育は軟弱・徒長傾向を示し、8月15日の草丈は、全道平均で94.9cmと平年対比で6cm長くなりました。また、遅発分げつで茎数を確保した地帯も多く、穂揃性の悪化も心配です。
    4. (4)収量構成要素は、穂数がやや少ないですが、一穂籾数は平年並~やや多く、稔実歩合は平年並と見込まれることから、稔実籾数は平年並からやや多く確保できる見通しとなっています。また、生育状況においては例年にも増して、地域差やほ場間差があると思われます。
    5. (5)品質について、昨年のような異常高温による白未熟粒や胴割粒の発生は少ないと予想されますが、穂ばらみ期の日照不足が深刻だった地帯もあり、穂の発育が不健全な場合には、千粒重の低下等の懸念も残るため、今後の状況を注視していきたいと思います。
    6. (6)さらに本年は、各地で大雨の被害が発生しました。渡島・檜山管内では、6/29、8/8、8/15~16の3回の大雨で、被害が発生しました。特に8/15~16の大雨では檜山北部の被害が甚大となりました。今金町では24時間降水量が200mmを超え、250haの水田で冠水被害が発生しています。
    7. (7)病害虫の発生状況においては、いもち病は全般の日照不足で稲の抵抗力が低下し、多発してもおかしくない状況が続き、8月後半になって散発しましたが、適切な防除対策の実践により、実害はほとんど発生していません。
      また、アカヒゲホソミドリカスミカメも一時捕虫数が多くなりましたが、その後は平年並となっています。
  3. 今後の技術対策
    1. (1)整粒歩合を高めるため、4つの重点項目に取り組みましょう。
      1. ア 試し刈りした玄米で収穫適期を判定します。
      2. イ 品質向上のため、登熟の遅れている稲や倒伏した部分は別刈りを行います。
      3. ウ 二段乾燥と丁寧な調製を行い、胴割粒の発生を防ぎます。
      4. エ 異品種混入を防止するため、作業場や機械の清掃を行うとともに、計画的に作業を進めます。
    2. (2)胴割粒の発生防止対策
      1. ア 発生要因として、刈り遅れによる主稈の水分低下があげられます。収穫期の降雨や籾水分が25%以下になると発生のリスクが高まるため、適期収穫に努めます。特に遅れ穂の登熟待ちは発生を助長するため、こまめな玄米判定による適期収穫を励行する必要があります。
      2. イ また、乾燥初期の水分が高いうちに急激に乾燥させることにより発生が助長されることがあげられます。このため、穀温はできるだけ低くすることが望ましく、乾燥開始時は40℃以下(毎時乾減率が0.5%~0.6%程度)になるよう設定します。籾水分が25%未満になったら、通常の温度で乾燥(毎時乾減率が0.5%~0.8%)を行います。二段乾燥は「胴割れ」の発生を防止する重要な技術なため積極的に取り組みます。過乾燥も胴割れの発生を助長するため、玄米水分14.5%~15.0%で仕上げます。