令和5年度小麦作柄現地調査報告

令和5年度 秋まき小麦起生期現地調査について

4月18日から27日まで、北海道、北海道立総合研究機構農業研究本部、地区米麦改良協会の協力を得て、秋まき小麦起生期現地調査を行いました。主な調査先として、「秋まき小麦優良品種決定現地試験ほ」、「農作物生育状況調査ほ」、「令和4年度北海道麦作共励会最優秀賞受賞者 藤田光輝氏ほ場」、「北見農業試験場育種ほ場」など17カ所を選定しました。

調査概要につきましては、北海道農政部生産振興局技術普及課 石村主任普及指導員、千葉主査に作成していただき、ここにその内容を掲載いたします。
本調査にあたって、お忙しいなか対応いただいた生産者の皆様、JA、各地区農業改良普及センター、農業試験場ほか関係の皆様に感謝申し上げます。

1.調査者

<調査者>

北海道農政部生産振興局技術普及課 十勝農業試験場駐在 石村主任普及指導員

北海道農政部生産振興局技術普及課 農業研究本部駐在  千葉主査

<オブザーバー参加>

ホクレン農業総合研究所営農支援センター 池口特任技監

<事務局>

一般社団法人 北海道農産協会米麦部、地区米麦改良協会

2.調査概要

【全道の概要】

は種は平年並~やや早く行われており、越冬前の生育は良好であった。3月の高温により、融雪期、起生期は平年より早まった。起生期の茎数は、平年並~やや多い傾向にある。

雪腐病は平年並~やや少なく生育への影響は少ない。また、は種の早い一部ほ場では「縞萎縮病」が疑われる黄化症状が散見されたが、4月下旬以降、回復傾向にある。

全般的に生育は平年より早まっていることから、今後、生育に応じた適正な栽培管理に努めることが重要である。

(1)空知(深川市、栗山町、岩見沢市栗沢町、岩見沢市北村)

対応:空知農業改良普及センター本所、北空知支所、空知南東部支所 畑作担当者
   岩見沢市農業試験圃 担当者

は種は平年並であり、越冬前の生育は良好であった。3月の気温が高く、融雪期、起生期は平年より早かった。雪腐病は平年並~少なく、4月上中旬頃から赤さび病の発生が見られた。茎数は平年並~やや多い傾向で、生育に応じた追肥時期や量の調整が行われている。

小麦優決ほ(岩見沢市北村)

小麦優決ほ(岩見沢市北村)

(2)後志(京極町)

対応:後志農業改良普及センター本所 畑作担当者

は種は平年並であり、越冬前の生育は良好であった。3月の高温により融雪期は平年より早かった。雪腐病の発生は少なく、生育への影響は少ないと見込まれる。起生期の茎数は平年並~やや多い傾向であり、生育に応じた追肥時期や量の調整が行われている。

小麦優決ほ(京極町)

小麦優決ほ(京極町)

(3)胆振(伊達市)

対応:胆振農業改良普及センター本所 畑作担当者

は種は平年並で、越冬前の生育は良好であった。融雪期、起生期はほぼ平年並であったが、3月中下旬の高温により幼穂形成期は早まった。雪腐病の発生は少なく、生育への影響は少ないと見込まれる。起生期茎数はやや多い傾向であり、生育に応じ追肥時期や量が調整されている。

小麦優決ほ(伊達市)

小麦優決ほ(伊達市)

(4)上川(富良野市、美瑛町、旭川市東旭川、名寄市)

対応:上川農業改良普及センター本所、富良野支所、大雪支所、名寄支所 畑作担当者

は種は早く、越冬前の生育は良好であった。3月の気温が高く、融雪期、起生期は平年より早かった。雪腐病は防除後に降雨が多かった地域などで見られるものの、平年並~少ない。

起生期茎数は平年並~やや多い傾にあり、生育に応じた追肥時期や量の調整が行われている。

小麦優決ほ(富良野市)

小麦優決ほ(富良野市)

小麦優決ほ(名寄市)

小麦優決ほ(名寄市)

(5)オホーツク(訓子府町、女満別町、清里町)

対応:網走農業改良普及センター本所、美幌支所、清里支所 畑作担当者

は種は平年並で、越冬前の生育は順調である。3月の好天で融雪期、起生期は平年より早かった。
雪腐病の発生は少なく生育への影響は少ないとみられる。しかし、一部ほ場では、12月の降雨による滞水で枯死株が見られる。茎数は平年並~やや多い傾向にある。

小麦優決ほ(女満別町)

小麦優決ほ(女満別町)

小麦生育調査ほ(清里町)

小麦生育調査ほ(清里町)

(6)十勝(更別村、帯広市川西、士幌町)

対応:十勝農業改良普及センター本所、十勝北部支所 畑作担当者

秋期の気温が高かったため越冬前の生育量は十分確保された。平年と比べて融雪期、起生期は早く推移し、越冬後の生育も良好であった。雪腐病による被害は極僅かであった。4月上旬の越冬後早々に鎮圧作業や生育量に応じた窒素追肥が行われていた。

一方、縞萎縮病が疑われる症状のほ場は、例年並に散見され、特に、は種時期が早かった一部のほ場では、部分的に発生が目立ったものの、4月下旬に至り回復傾向にある。今後、幼穂形成期も平年より早く迎える見込みである。

藤田光輝氏ほ場(帯広市)

藤田光輝氏ほ場(帯広市)

小麦優決ほ(士幌町)

小麦優決ほ(士幌町)

3.今後の管理ポイント

起生期、幼穂形成期など、生育が早まっていることから、病害虫防除など適期を逃さないよう、ほ場観察に努める。近年、成熟期の穂数が過剰となり、収穫時に倒伏し品質低下する事例が見られることから、過度な追肥を避ける。

縞萎縮病、なまぐさ黒穂病などのまん延を防止するため、適正な輪作に努めるとともに、土づくりや排水対策を行い健全な生育を確保する。また、近年、越冬前の気象条件が良好で、越冬前茎数が多く過繁茂傾向にあることから、は種時期に応じたは種量を設定していく必要がある。