令和6年度 秋まき小麦起生期現地調査について

 4月15~25日まで、北海道、道総研農業研究本部各農業試験場、地区米麦改良協会の協力を得て、秋まき小麦起生期現地調査を実施しました。主な調査先は、「秋まき小麦優良品種決定現地試験ほ」、「農作物生育状況調査ほ」、「令和5年度北海道麦作共励会受賞者ほ場」「北見99号大型実証ほ場」など21カ所を調査しました。

 調査概要につきましては、北海道農政部生産振興局技術普及課の畑作担当普及指導員様に作成していただき、ここにその内容を掲載いたします。

 本調査にあたって、お忙しいなか対応していただいた生産者の皆様、各JA、各農業改良普及センター、農業試験場ほか、関係する皆様に感謝申し上げます。

1.調査者

北海道農政部生産振興局技術普及課 北見農業試験場駐在 中村上席普及指導員
      〃          十勝農業試験場駐在 石村主任普及指導員
      〃          農業研究本部駐在  千葉主査
      〃                    木村主査

<オブザーバー参加>

ホクレン農業協同組合連合会 農産事業本部 農産部 麦類課 池口特任技監

<事務局>

北海道農産協会米麦部、地区米麦改良協会

2.調査概要

(1)空知(岩見沢市北村、岩見沢市栗沢町、長沼町、深川市)

対応:空知農業改良普及センター本所、南西部支所、北空知支所 畑作担当者
   岩見沢市農業試験圃 担当者、北見99号大型実証ほ 生産者
   JAながぬま 担当者

岩見沢市農業試験圃 優決ほ場

岩見沢市農業試験圃 優決ほ場

 は種は降雨等の影響により平年より遅れ、一部で10月中旬以降には種したほ場も見られた。融雪期、起生期は平年よりやや遅かった。
 積雪下で融雪水が滞水した影響と考えられる冬損が例年より目立つ地域がある。
 越冬前の気温が平年より高かったため、起生期の茎数は適期は種ほ場では多い。一方で、は種が遅れたほ場では不足しており、収量・品質への影響が懸念される。縞萎縮病などが疑われる茎葉の黄化が例年より早い地域がある。
 長沼町の北見99号大型実証ほは、降雨等の影響によりは種が10月15日となった。起生期の茎数は少ないが雪腐病等の冬損は少なく、越冬状況は良好である。

(2)石狩(千歳市)

対応:石狩農業改良普及センター本所 畑作担当者

千歳市 優決ほ場

千歳市 優決ほ場

 は種は降雨等の影響により平年より遅れた。
 千歳市の融雪期は平年より遅く、起生期は平年並となった。積雪期間が平年より長かったことから、普及センター本所管内の雪腐病の発生は多い。越冬前の気温が平年より高かったため、起生期の茎数は適期は種ほ場では多く、生育に応じた追肥量と追肥時期の調整が行われている。

(3)後志(倶知安町、京極町)

対応:後志農業改良普及センター本所 畑作担当者

倶知安町 三好氏ほ場(共励会受賞者)

倶知安町 三好氏ほ場(共励会受賞者)

 は種は降雨等の影響により平年より遅れた。
 2月中旬及び3月下旬以降の高温により融雪が進み、融雪期、起生期とも平年より早かった。
 雪腐病の発生は平年並である。越冬前の気温が平年より高かったため、起生期の茎数は適期は種ほ場では多い。一方で、は種が遅れたほ場では不足しており、ほ場間差が大きい。縞萎縮病などが疑われる茎葉の黄化が散見される。

(4)日高(平取町)

対応:日高農業改良普及センター日高西部支所 畑作担当者
   生産者、JAびらとり 担当者

平取町 岡田氏ほ場(共励会受賞者)

平取町 岡田氏ほ場(共励会受賞者)

 「ゆめちから」ほ場を視察した。は種は一部で10月上旬に遅れたほ場もあったが、平均で9月18日に行われた。融雪は平年より早く、雪腐病の発生は少ない。起生期茎数は概ね目標値を確保しており、起生期追肥を実施済み。今後も自動操舵システムやセクションコントロール対応の施肥機、防除機等を活用した高精度、高能率の作業を行い、高品質な小麦づくりに取り組む。

(5)上川(富良野市、美瑛町、士別市多寄、旭川市)

対応:各JA職員、上川農業改良普及センター本所、富良野支所、大雪支所、士別支所
   畑作担当者

富良野市麓郷 北見99号大型実証ほ

富良野市麓郷 北見99号大型実証ほ

美瑛町 北見99号大型実証ほ

美瑛町 北見99号大型実証ほ

 は種は平年並~遅れたものの秋の気温が平年より高く推移したため、越冬前の茎数は平年より多かった。融雪期、起生期は、地域差があったが管内平均では平年並だった。調査ほ場では、雪腐病の発生も少なく、は種の早いほ場では過繁茂な状況であった。今回の上川管内の調査ほ場では全体に縞萎縮病と疑われるほ場の黄化は見られず、また調査ほ場の「北見99号」と「きたほなみ」の比較では、生育差が見られない状況だった。また過繁茂傾向のほ場も見られたことから、今後倒伏をさせないような栽培管理が望まれる。

(6)オホーツク(訓子府町、津別町、北見市常呂町、小清水町)

対応:北見農業試験場、各JA職員、網走農業改良普及センター本所、美幌支所、
   清里支所畑作担当者

北見市常呂町 北見99号大型実証ほ

北見市常呂町 北見99号大型実証ほ

小清水町 北見99号大型実証ほ

小清水町 北見99号大型実証ほ

 は種は平年並~やや遅かったものの、秋の気温が平年より高く推移したため、越冬前の茎数は平年より多かった。融雪期は平年並~やや早く、起生期はほぼ平年並だったが、2月下旬に一時融雪が進み、地上部が寒風にさらされたことから、融雪直後は葉先の黄化が散見された。今回の調査ほ場では、縞萎縮病抵抗性強の「北見99号」と「きたほなみ」で生育差が見られた。「北見99号」の実規模試験では適正な品質の生産物が望まれることから、今後倒伏をさせないような栽培管理をお願いした。

(7)十勝(中札内村、芽室町、音更町、上士幌町)

対応:各生産者、各JA職員、十勝農業改良普及センター本所・十勝北部支所畑作担当者

音更町 北見99号大型実証ほ

音更町 北見99号大型実証ほ

上士幌町 岩瀬氏ほ場(共励会受賞者)

上士幌町 岩瀬氏ほ場(共励会受賞者)

上士幌町 岩瀬氏ほ場(共励会受賞者)

上士幌町 岩瀬氏ほ場(共励会受賞者)

 は種期は平年並であったが、9月下旬~10月の平均気温が平年より高く経過したため、起生期の生育量は過繁茂な傾向にあり、窒素施肥配分は幼穂形成期に重点を置いていた。雪腐病の発生は少なく、縞萎縮病と疑われる黄化症状は、一部のほ場で4月3半旬頃から明瞭化し、発生程度は例年並みで、4月6半旬には回復傾向にあった。「北見99号」の生育は一部のほ場で過繁茂であったが、比較対照の「きたほなみ」でも縞萎縮病と疑われる症状は確認できなかった。