「令和6年度 小麦作柄現地調査」の結果について

 6月18~25日まで、北海道、道総研農業研究本部各農業試験場、地区米麦改良協会、各地区JAの協力を得て、小麦作柄現地調査を実施しました。主な調査先は、「秋まき小麦優良品種決定現地試験ほ」、「農作物生育状況調査ほ」、「令和4年度、令和5年度北海道麦作共励会受賞者ほ場」、「北見99号大型実証ほ」、「HW10号大型実証ほ」などで、全道17カ所を調査しました。
 調査概要につきましては、北海道農政部生産振興局技術普及課の畑作担当普及指導員の皆様の協力を得てまとめましたので、ここにその内容を掲載いたします。
 本調査にあたって、お忙しいなか対応していただいた生産者の皆様、各JA、農業改良普及センター、農業試験場ほか、関係の皆様に感謝申し上げます。

1.調査者

北海道農政部生産振興局技術普及課 北見農業試験場駐在 中村上席普及指導員
      〃          十勝農業試験場駐在 石村主任普及指導員
      〃          農業研究本部駐在  千葉主査
      〃                    木村主査

<オブザーバー参加>

ホクレン農業協同組合連合会 農産事業本部 農産部 麦類課 池口特任技監

<事務局>

北海道農産協会米麦部、地区米麦改良協会

2.調査概要

(1)空知(長沼町、深川市)

対応:空知農業改良普及センター南西部支所、北空知支所 担当者 長沼町「北見99号大型実証ほ」生産者、JA ながぬま 担当者

 起生期以降、気温が高めに推移したことから、止葉期は長沼町、深川市とも平年より5日程度早かった。5月下旬~6月上旬の低温で生育はやや緩慢となり、出穂期は長沼で平年より4日、北空知では2日早まった。穂数は平年並からやや少ないものの、遅れ穂は少なく穂揃いは良好であった。病害では、起生期以降の高温傾向で「赤さび病」の発生が早かった。害虫では、「ムギクロハモグリバエ」の食害が散見された。
 長沼町の「北見99号」の生育は良好で、穂数は「きたほなみ」並となっていた。

(2)石狩(恵庭市)

対応:石狩農業改良普及センター本所 担当者

 春まき小麦「HW10号」の大型実証ほを調査した。出芽は良好で、4~6月の気温は平年並~やや高く、日照時間は平年並~やや多い、降水量は平年より少なかったが生育は順調で穂揃いが良好であった。
 一部、地域で「うどんこ病」の発生がみられた。
 「ゆめちから」の生育も良好で病害虫の発生も少なかった。

恵庭市 HW10号 大型実証ほ

(3)後志(倶知安町)

対応:後志農業改良普及センター本所 担当者

 令和5年度北海道麦作共励会 特別優秀賞受賞の三好紳仁氏の「きたほなみ」ほ場を調査した。野菜を組み入れた6年輪作体系に取り組まれている。小麦の生育は順調で、穂揃いも良好。植物成長調整剤により草丈伸長が抑制されていた。
 後志管内の秋まき小麦の出穂期は平年より3~4日早く、茎数は平年よりやや少なく推移していた。病害虫では、赤さび病の発生が見られたが適正に防除されていた。

(4)上川(富良野市、美瑛町)

対応:JAふらの 担当者、上川農業改良普及センター富良野支所、大雪支所 担当者

① 富良野市学田地区(平地部)、麓郷地区(山間部)「北見99号大型実証ほ」

 「北見99号」の出穂期は「きたほなみ」(富丘地区 農作物生育状況調査ほ)に比べ、学田地区は5日早く麓郷地区は1日遅くなっている。茎数は、学田地区 876本/㎡とやや多く、麓郷地区775本/㎡とやや少なかった。
 「きたほなみ」(富丘地区)の茎数は平年より少ないものの、穂揃いが良く生育も平年並であった。病害虫では、「赤さび病」の発生が見られたが、適正に防除されていた。
 当地域は適度に降雨もあり、日照時間も平年並であったことから生育は順調である。植物成長調整剤も散布されており、倒伏対策が実施されていた。

② 美瑛町「北見99号大型実証ほ」

 起生期以降の高温で止葉期は平年より早まったが、5月下旬~6月上旬の低温で生育は緩慢となった。「きたほなみ」(農作物生育状況調査ほ)に比べ、穂数は多いが穂揃いは良好である。病害等では、「赤さび病」の防除が遅れた一部ほ場で発生が多くなっていた。
 「ゆめちから」では、特性である葉の黄化症状が目立っていた。春まき小麦では、「うどんこ病」が見られるが生育は良好であった。

(5)オホーツク(訓子府町、津別町、北見市端野町・常呂町、小清水町)

対応:北見農業試験場、各JA担当者、常呂町麦作生産部会、小清水町「北見99号大型実証ほ」生産者、網走農業改良普及センター本所、美幌支所、清里支所 担当者

北見農試ほ場

① 北見農試(訓子府町)

 北見農試の作況での秋まき小麦の出穂期は3日早く、春まき小麦は平年並であった。
 秋まき小麦、春まき小麦とも作況は平年並となっていた。

② 北見市端野町「HW10号大型実証ほ」

 茎数1400本/㎡と多いが、生育は良好で穂揃いも良い。病害では「うどんこ病」の発生は少ない。

③ 北見市常呂町「北見99号大型実証ほ」

 「北見99号」は「きたほなみ」とほぼ同様に穂数がやや多いものの生育は非常に良好であった。
 出穂期、開花期は、「きたほなみ」より4日早かった。隣接の「きたほなみ」ほ場では、「縞萎縮病」による生育抑制が見られた。

④ 津別町 (株)たつみ(きたほなみ)

 平年より降水量が少ないが、日照時間は多い。穂数がやや多いが穂揃いは良好で、6月上旬以降の天候回復で一斉に開花を迎えていた。

⑤ 小清水町「北見99号大型実証ほ」

 6月の降水量が少なく、気温は平年並からやや高く、日照時間も平年並~やや多い。止葉期は2~4日早かったが、5月下旬の低温で出穂期は平年より2日程度遅れた。病害では、「赤さび病」、「うどんこ病」の発生が見られた。

(6)十勝(中札内村、帯広市、音更町、上士幌町)

対応:帯広市、上士幌町生産者、各JA職員、十勝農業改良普及センター本所、十勝北部支所、十勝東部支所 担当者

① 中札内村 農作物生育状況調査ほ(きたほなみ)

 春先から生育は順調。乳熟期で3~4日早まる見込み。出穂頃は低温であったが、その後の好天で開花が揃った。稈長、穂長は長い。穂数は平年並で、穂揃いも良かった。
 病害虫では、「赤さび病」、「アブラムシ類」の発生が目立っていた。

② 帯広市 藤田光輝氏ほ場(きたほなみ)

 令和4年度北海道麦作共励会 最優秀賞受賞の藤田氏ほ場を調査した。6月の降水量が少ないことから、石礫を含む部分で茎葉の黄化が見られた。
 連作ほ場では、生育がやや緩慢となっているものの、ほ場全体では穂数も平年並からやや多く、穂揃いも良好であった。「アブラムシ類」の発生が多い。

③ 音更町「北見99号」大型実証ほ

 起生期茎数が3000本/㎡とかなり多かったが、その後の管理で6月20日現在、700本/㎡となっていた。6月の降水量が少なく茎数の減少が大きかった。5月下旬から6月上旬の低温で開花がばらついたが、順調に登熟している。病害虫では、「赤さび病」、「アブラムシ」の発生が見られた。

④ 上士幌町 岩瀬紀昭氏ほ場(きたほなみ)

 令和5年度北海道麦作共励会 最優秀賞受賞の岩瀬氏ほ場を調査した。起生期茎数は2000本/㎡程度であったが、本調査時の穂数は700本/㎡と本人の目標穂数より若干少ないことから、今後施肥で穂の充実を図っていくとのこと。生育は順調で病虫害の発生も少なかった。

⑤ 池田町 生育状況調査ほ(きたほなみ)

池田町 農作物生育調査ほ

 越冬前の生育は旺盛で茎数が多かったが、現在、平年並近くまで減少してきている。
 5月下旬から6月上旬の低温、降霜で生育は一時、停滞した。その後気温は高く推移したが、6月の降水量は平年の30%程度と少なく、降雨が待たれる状況であった。
 出穂期は平年より3日程度早い。

(7)まとめ

小麦作柄調査の総括

 秋まき小麦では、全道的に越冬状況も良好で、起生期以降の好天で生育が進み、止葉期は4~5日早まった。その後の5月下旬から6月上旬の低温で生育が緩慢となり、出穂、開花に時間を要した地域が多かった。穂数は全道的に平年並~やや多いが、穂揃いは良好であった。病害虫では、「赤さび病」の発生が早かったものの適切に防除されていた。
 春まき小麦は、播種も順調で出芽も良好で揃っていたことから、穂数は平年より多く、穂揃いが良好な地域が多かった。また、病害虫では「うどんこ病」の発生がみられるものの、適正な防除が実施されていた。
 秋まき小麦、春まき小麦とも、今後の気象経過にもよりますが、平年並から平年並以上の収量が期待されます。
 今後、「赤かび病」など病害虫の適正防除を進めるとともに登熟状況に応じた適期収穫を行い、品質を確保しましょう。