令和7年度 小麦作柄現地調査の概要について

 小麦の作柄状況を把握するため、各地区の農業者、JA担当者、農業改良普及センター、北海道農政部生産振興局技術普及課の協力を得て、以下の日程で調査を行いました。その調査結果の概要を以下に整理しましたので、今後の作業の参考としてください。

○巡回日・巡回先(合計20カ所)

6月16日空知地区(深川市、滝川市、岩見沢市)・石狩地区(当別町)
6月17日後志地区(真狩村)、日高地区(平取町)
6月18~19日留萌地区(小平町、初山別村、遠別町)、上川地区(美深町、名寄市、
美瑛町、富良野市)
6月23~24日オホーツク地区(清里町、津別町、北見農試)、十勝地区(音更町、
池田町、帯広市、上士幌町)

○調査者

北海道農政部生産振興局技術普及課農業研究本部駐在   主査(普及指導)八木登喜子 氏
        〃 十勝農業試験場駐在  主任普及指導員 斉藤 克史 氏
        〃 北見農業試験場駐在  上席普及指導員 中村  浩 氏
ホクレン農産事業本部農産部麦類課 特任技監               池口正二郎 氏

○事務局 北海道農産協会 米麦部

1. 各地区の小麦生育状況について

(1)空知・石狩・後志・日高地区

 ①生育状況

  • 秋まき小麦の幼穂形成期、止葉期は、平年より遅れていたが、好天により生育は平年並となっている。
  • 草丈は平年並で推移してるが、穂数が多いほ場では、「なびき」が散見される。

 ②病害虫の発生状況

  • 赤さび病は、一部地域(空知など)で発生が見られるが、適正に防除されている。
  • 赤かび病は、適期防除されており発病は少ない。
  • ムギクロハモグリバエ、ムギキモグリバエ、マイマイガ等の食害が見られるが、被害は少ない。
  • コムギ縞萎縮病発生ほ場では、未発生ほ場に比べ草丈短く生育は遅れている。

 ③収量等の見込み

  • 6月下旬以降の高温傾向で生育は進んでおり、成熟期は平年並からやや早まると見られる。
  • 今後の天候にもよるが、平年並から平年をやや上回る収量を期待したい。
深川市優決ほ場
滝川市生育調査ほ場
岩見沢市農業試験圃 優決ほ場
当別町生育調査ほ場
真狩村 向井翔一氏ほ場(令和6年北海道麦作共励会 最優秀賞受賞者)
平取町 岡田拓未氏ほ場(令和5年北海道麦作共励会 最優秀賞受賞者)

(2)留萌・上川地区

 ①生育状況

  • 幼穂形成期、止葉期は平年より遅れていたものの、高温傾向で生育は平年並となっている。
  • 草丈は平年並で、茎数は平年よりやや少ない。
  • 一部連作となっているほ場では、雑草がやや目立つ。

 ②病害虫の発生状況

  • 赤さび病を始め、目立った病害虫の発生は見られなかった。

 ③収量等の見込み

  • 本年は、昨年、一昨年と比べ適度に降雨があり生育が良好なため、病害虫や倒伏の発生がなければ、平年並の収量が期待される。
小平町生育調査ほ場
初山別村生育調査ほ場
遠別町生育調査ほ場
美深町 初冬まきほ場
名寄市優決ほ場
美瑛町優決ほ場

(3)オホーツク地区

 ①生育状況

  • 茎数は平年より少ないものの、必要十分な穂数は確保できている。生育も平年並となっている。
  • コムギ縞萎縮病が発生していたほ場では、稈長は短く出穂も遅れていた。また、コムギ縞萎縮病が発生しておらず、起生期にやや過繁茂傾向だったほ場では、適切な追肥管理により茎数は平年並となっている。

 ②病害虫の状況

  • 赤さび病は、出穂前に防除しているほ場が多いため、発生が抑えられている。

 ③収量等の見込み

  • 今後の天候にもよるが、コムギ縞萎縮病の影響が少なければ、平年並の収量が見込めると思われる。
清里町生育調査ほ場
津別町 (株)たつみ ほ場(令和6年北海道麦作共励会 最優秀賞受賞者)
北見農試ほ場
北見農試(秋まき小麦)

(4)十勝地区

 ①生育状況

  • 草丈は平年並で、茎数は平年並~やや多くなっている。
  • 出穂はやや遅れていたが、開花は平年並となっている。6月中旬の風雨により一部ほ場で「なびき」が見られる。
  • コムギ縞萎縮病発生ほ場では、未発生ほ場に比べ生育がやや遅れている。

 ②病害虫の発生状況

  • 赤さび病、アブラムシの発生は少ない状況にある。

 ③収量等の見込み

  • 6月下旬以降の高温傾向で生育は進んでおり、成熟期は平年並からやや早まるとみられる。今後の天候にもよるが、平年をやや上回る収量を期待したい。
音更町生育調査ほ場
池田町生育調査ほ場
帯広市 藤田光輝氏ほ場(令和4年北海道麦作共励会 最優秀賞受賞者)
上士幌町 岩瀬紀昭氏ほ場(令和5年北海道麦作共励会 最優秀賞受賞者)

2. 小麦作柄現地調査のまとめ

  • 秋まき小麦は、草丈は平年並で、茎数は平年並からやや多い傾向にある。
  • 幼穂形成期、止葉期は平年より遅れていたが、気温が高めに推移したことから、出穂期、開花期は平年並となっている。
  • 春まき小麦は、は種作業、出芽が遅れ、例年より生育量が少ないものの、出穂期は平年並となっている。
  • 病害虫では、赤さび病、ムギクロハモグリバエ、ムギキモグリバエ等の発生が見られるが被害は少ない。

3. 収穫に向けて

  • 収穫適期予測技術(穂水分測定等)を活用し、適期に収穫を行う。
  • 赤かび病発生ほ場は別刈りして、健全な小麦と混ざらないようにする。
  • 倒伏部分や穂発芽発生ほ場は子実の充実が悪くアミロの低下など品質が劣るため、品質向上のため別刈りして乾燥調製する。
  • コムギなまぐさ黒穂病発生ほ場は収穫を避け、周辺ほ場への被害拡大防止及び生産物への異臭麦の混入を防止する。

(文責 一般社団法人 北海道農産協会 米麦部 特任技監 三宅俊秀)