令和4年産小麦作柄現地調査報告
6月23~24日:空知(中央部)、石狩、胆振、後志の6地点、6月27~28日:空知(中央部、北部)、上川の5地点、7月7~8日、オホーツク、十勝の6地点の全道17地点で作柄調査を行いました。
本調査にあたっては、北海道農政部生産振興局技術普及課、各農業改良普及センター、各地区米麦改良協会、各市町村、各農業協同組合、生産者に皆さんに格別のご協力をいただき大変ありがとうございます。
調査概要につきましては、道農政部生産振興局技術普及課 上堀上席普及指導員、片山総括普及指導員、花岡主任普及指導員、千葉主査に作成していただきましたので、ここにその内容を掲載いたします。
上堀上席普及指導員、片山総括普及指導員、花岡主任普及指導員、千葉主査、お忙しいなか現地対応いただいた生産者の皆様、各JAの担当者様、農業改良普及センターほか関係の皆様に感謝申し上げます。
令和4年7月14日
一般社団法人 北海道農産協会
1.全道の傾向
(1)生育の概況
令和4年産のは種作業は順調に行われた。その後も好天が続き、根雪も遅かったことから順調に生育し、越冬前の茎数は平年を上回った。
3月にまとまった降雪があったが根雪期間は平年より短かく、起生期は一部地域を除いて早まった。融雪期以降は高温で経過し、幼穂形成期、止葉期も平年より早かったが、5月下旬から6月上旬の低温により、出穂、開花に日数を要し平年並の生育となった。
(2)病害虫
病害虫の発生は概ね少ない。
雪腐病 | 根雪前の降水量が多く、薬剤の防除効果が劣ったことから、雪腐病の発生面積は多かったが、被害程度は軽かった。一部地域では根雪の遅れにより雪腐大粒菌核病が発生した。 |
縞萎縮病 | 発生は概ね少なかった。 |
赤さび病 | 一部で止葉まで進展しているほ場が見られる。 |
赤かび病 | 開花が長期にわたったことで平年よりやや目立つ。 |
眼紋病 | 発生が散見される。 |
(3)倒伏など
6月24日、7月4日の風雨により、茎数の多いほ場では倒伏が発生した。
開花時期に低温に遭遇したことにより不稔の発生が懸念されるが、大きな影響はないと見込まれる。
(4)登熟状況
秋まき小麦は、開花時期の低温による不稔や倒伏の影響が懸念されるが、登熟は順調に進んでおり、成熟期は平年並と予想される。平年以上の収量を期待したい。
春まき小麦の生育は順調だが、一部地域では7月4日の風雨による倒伏が見られる。
2.各管内の特徴
(1)空知(調査地点:岩見沢市、美唄市、深川市)
6月上旬の気温は平年をやや下回り、出穂、開花が緩慢となった。
ほ場の乾湿による生育ムラが散見される。
病害の発生は少ないが、一部で赤さび病が止葉まで進展しているほ場が見られる。
茎数はほぼ平年並で推移しているが、茎数の多いほ場では6月24日、7月4日の風雨により倒伏が見られる。
成熟期は平年並~やや早いと見込まれる。
(2)石狩(千歳市)
3月の降雪により融雪が遅れたが、その後の好天により生育は平年並で推移している。
病害の発生は少ないが、一部で赤さび病が止葉まで進展しているほ場が見られる。
7月4日の風雨により倒伏の発生が見られる。
成熟期は平年並~やや早いと見込まれる。
(3)胆振(安平町)
起生期以降の少雨で、茎数はやや少なく推移している。
6月上~中旬の低温の影響はほとんど無く、出穂、開花は平年並となった。
病害の発生は少ない。
成熟期は平年並~やや早いと見込まれる。
(4)後志(真狩村、京極町)
起生期以降の好天で茎数はやや多く推移した。(7/1は+31本で並)
5月下旬から6月上旬にかけて低温となったが日照時間が多く、出穂、開花は順調だった。
病害の発生は少ない。
6月24日の風雨で茎数の多いほ場では一部に倒伏が発生した。
成熟期は平年並~やや早いと見込まれる。
(5)上川(美瑛町、士別市、名寄市)
茎数は起生期以降多めに推移している。(7/1作況は平年比102%)
6月上旬の低温により出穂、開花が停滞した。
赤かび病の発生が平年よりやや目立つ。赤さび病、ふ枯病の発生が見られる。
6月中旬から7月上旬の風雨により、一部ほ場で倒伏が発生した。
成熟期は平年並と見込まれる。
(6)オホーツク(小清水町、北見市)
越冬後茎数は平年より多かったが、起生期以降の高温・少雨で過乾燥となったことで弱小茎の淘汰が進み、穂数は平年を下回っている。
5月下旬から6月上旬の気温は平年を大きく下回り、出穂、開花が停滞し長期にわたった。このことから赤かび病の発生が平年よりやや目立つ。
根雪の遅れにより一部で雪腐大粒菌核病が発生したが、生育への影響はなかった。
成熟期は平年並と見込まれる。
(7)十勝(帯広市、中札内村、豊頃町)
3月の降雪により起生期はやや遅れた。越冬後茎数は平年より多かったが、起生期以降の高温・少雨で過乾燥となったことで弱小茎の淘汰が進んだが、6月以降の降雨により遅れ穂の発生がやや目立っている。
5月下旬から6月中旬の気温は平年を大きく下回り、出穂、開花が停滞し長期にわたった。赤かび病、ふ枯病の発生がやや目立つ。
根雪の遅れにより雪腐大粒菌核病が発生したが、生育への影響は見られなかった。
成熟期は平年並と見込まれる。
3.今後の留意点
(1)収穫前のほ場状況確認
令和4年産は、開花の長期化による登熟のばらつきが懸念される。また、地域によっては遅れ穂が目立つ。このような状況で一律に収穫することは収穫物の品質に悪影響をおよぼす。また、ほ場内に土壌の流亡、浸食のある場合は、農作業事故や機械の故障などトラブルの原因にもなりかねないことから、事前にほ場の状況を確認し、収穫や乾燥調製に影響をおよぼす要因の有無を確認しておく。
(2)倒伏への対応
倒伏が発生した地域では、赤かび病の発生やDON濃度の上昇、低アミロや穂発芽など品質への悪影響を最小限にとどめるため、倒伏した部分は区分して収穫するなどの対応により品質確保に努める。
(3)後作緑肥の栽培
収穫跡地では、緑肥作物の栽培による地力向上を図るとともに、心土破砕などにより土壌の物理性を改善する。
(4)令和5年産のは種にむけて
①適正輪作と適期適正播種
例年、茎数や穂数が過度な状況が見られることから、適期適正播種に努める。また、コムギ縞萎縮病の発生が拡大傾向にあること、一部では眼紋病の発生が見られることから、適正輪作や排水対策など基本技術を励行し、小麦が健全に生育できる圃場管理に努めることが肝要である。
②土壌診断に基づく土壌改良と施肥設計の実施
土壌改良資材や肥料などの価格が高騰していることから、ムリムダのない効率的な土壌改良が求められる。計画的に土壌診断を実施し、結果に基づき適正な土壌pH調整や施肥設計を行う。特に、土壌分析には時間を要するので、計画的に土壌採取を行う。